取締役常務執行役員
経理部長 兼 総務部長 白井 昌哉 氏
営業所や工場の担当者でも入力しやすいDelphi/400の販売管理システムは、長い間、当社の業務を支え続けています。情報システム以外の業務でも多忙な中、ValenceによりIBM i のデータ活用を進められるようになりました。ローコードツールの利点を生かし、開発の一部をシステム未経験者に任せる体制も整ってきました。
会社名 | 太陽エコブロックス株式会社 | ||||
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本社所在地 | 大阪府大阪市福島区吉野4-22-9 | ||||
創業 | 1946年(昭和21年) | ||||
設立 | 1952年(昭和27年) | ||||
資本金 | 3,013万円 | ||||
従業員数 | 110名 | ||||
URL | https://www.taiyo-ecobloxx.com/ | ||||
建築や舗装など様々な用途に使用されるコンクリートブロックを製造。業界のパイオニアとして、排気ガス浄化ブロック・緑化ブロック、個性的で美妙なブロックなど常に時代のニーズに応える製品を提供している。
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太陽エコブロックスは、戦後、セメント瓦の製造からスタートし、建築用・土木用ブロック、舗装材と製品の幅を広げてきた。美観や強度に優れたコンクリートブロック製品は、その強みを生かして建物の外壁などにも幅広く使用されている。また、グループ会社を含めて、製造から施工まで一貫したサービスを提供している。
IBM i ・AS/400の利用歴は古く、S/36の販売管理・会計・給与システム導入まで遡る。販売管理は外部委託にて開発した独自システムで、会計・給与はパッケージ(iSite)をベースとしている。1993年にAS/400に移行し、1999年にAS/400を本社の1台に集約。その後も約10年毎に新モデルに切り替え、現在のIBM i に至っている。
1999年、AS/400の入れ替え時にある開発ツールを使ってGUI化を実施。しかし、5250画面と同様の画面サイズの制約が残ったため使い勝手はあまり改善せず、完成アプリのカスタマイズが困難ということもあり、GUI化は進展しなかった。
AS/400の導入時から現在まで同社の情報システムを一手に引き受けてきた白井氏は「工場で使用する受注・出荷システムが使いにくいことが喫緊の課題でした。受注画面で入力する商品コードの検索が困難なため、個人的に作成したノートに頼る担当者も多く、その担当者が急に休むと職場が混乱することもありました」と当時の状況を説明する。「GUI画面で誰でも画面入力ができるシステムを求めて、いくつかの開発ツールを比較検討した結果、2004年にDelphi/400を導入しました。Delphi/400ならRPGプログラムの呼び出しが簡単で開発しやすいと感じました」
2005年からDelphi/400による工場の出荷システム(受注在庫管理システム)の開発に着手。開発にはミガロ.の協力も得て2007年から運用を開始し、2008年にはほぼ現在のアプリケーション構成まで一通り完成した。メニューは分かりやすいツリー表示形式を採用している(図1)。
商品検索では、画面上部に品種、型、サイズ、色、外観、機能、といった絞り込み用の条件が表示されており、商品を容易に絞り込むことができる(図3)。商品検索が便利になったため、誰でも入力できるシステムとなった。
また、出荷業務で頻繫に使用するのは「出荷状況照会」で、受注一覧を「状態」(仮受注、受注、出荷指示中、出荷済)で絞り込んで参照できる(図4)。出荷業務担当者は、未出荷分について出荷先を確認の上、配送の手配を行う。コンクリートブロック製品の性格上、配送先は1回限りの工事現場になることも多く、効率的な配送順や積載量を考慮した出荷計画が重要となる。「出荷状況照会」画面は、出荷業務をスムーズに行えるように工夫を凝らしたデザインとなっている。
他にも営業向けの「出荷証明書作成」、「見積書作成」、製造データを受け取る「製造報告書Excel取込み」、施工担当の太陽サーブ株式会社向けの「注文書」などの画面をDelphi/400で開発している。
日々の業務課題をDelphi/400アプリの工夫で解決した例として、「IBM i のスプールファイルコントロール機能」が挙げられる。営業所では1日の最後に出荷伝票を出力するが、5250画面のOUTQ応答が使いにくいため、Delphi/400によるメニュー化を図った。取扱拠店と営業担当者の拠店が異なるために印刷した出荷伝票を拠点間で送り合う運用もあったが、印刷部署を営業担当者の拠店に紐づけることにより、この問題も解決した。
(本事例は、ミガロ.テクニカルレポート2013に掲載。社名・肩書は当時)
https://www.migaro.co.jp/contents/support/technical_report_search/no06/case/06_02_06.pdf
Delphi/400の導入により、すべての営業所・工場でGUI画面だけでIBM i 入力が行えるようになり、社員の40%以上が日々の業務で使用している。
IBM i にさまざまな取引データが蓄積するに伴い、データ分析・集計用ファイルを作成するためのRPGの開発も行ってきた。ただし、これを営業資料に活かすためには、Queryで集計し、ExcelにダウンロードしてPC上で加工する必要があった。この作業はユーザー部門では行えないため業務量が増大し、仕事が減らない日々が何年も続いた。その間、さまざまなデータ抽出ソフト等も検討したが、機能面・価格面で条件を満たすものが見つからなかった。ミガロ.からValenceの紹介を受け、社内データによるサンプルなども確認し、データ活用の課題を解決できるツールとして導入を検討。2021年、IBM i の入替えに合わせて導入した。Valenceの以下の特徴は、使い易さのポイントと感じている。
■ 開発環境と運用環境がきっちりと分けられる
■ 運用メニュー(Valenceポータル)では、担当者のIDにより必要なアプリのみ表示できる
■ Webアプリなので配布が不要
■ 表形式のデータをExcel・CSVにダウンロード可能
当初は全社にValenceを公開せず、現場部門からの個別のデータ出力要求に応える形でアプリを作成していた。しかし、与信管理を強化する課題が持ち上がったことにより、「取引先与信照会」を開発し正式にリリース。IBM i にある既存データを使い、Valenceならではのスピード開発ができた。取引先企業の各部署を統合した与信残高を毎日チェックする業務に欠かせない画面となっている。(図5)
また、もともと帳票だった仕組みを画面照会に変更してペーパーレス化する目的でもValenceを活用している。その一例が「未成工事支出金」画面である。小計も付けて帳票同様のわかりやすさを実現した。(図6)
ノンコーディングで開発できるValenceの特徴を生かして、システム未経験者へのスキルトランスファーも進めている。IBM i のDBは、過去の開発経緯を理解していないと正確な取扱いが難しいため、データソースの作成までは白井氏が行い、その後のウィジェット(グリッドなど)作成以降は経理担当者が開発する役割分担で、Valenceアプリケーションを順調に増やすことができた。「SURV現場照会」画面はその一例である(図7)。タブ、並べ替え、データエクスポート、着色、画面分割など様々な機能を取り入れた本画面には、担当者の個性も表れており、システム開発に新たな活力が生まれている。
グラフ利用・モバイル(タブレット)利用については、まだ本格運用前ではあるが、試作アプリは完成している。同社では太陽光発電事業も行っており、発電量をグラフ化したものが図8である。
特定部門や特定業務向けのシステムが簡単に作成できるクラウド型の開発ツール(kintone等)が注目されている。IBM i 利用企業としては、新たなクラウドツール導入ではなくIBM i をDBサーバーとするシステム構築が理想だ。このような目的で、Valenceを使ったスタンドアローンの業務システムもいくつか追加している。フォークリフトの保険契約やリース契約を管理する「フォークリフト管理台帳」(図9)や「PC・モバイル管理台帳」(図10)などが例として挙げられる。
現在までに、約40ものアプリケーションをユーザーに提供することができた。提供アプリはすべてValenceポータル画面上のアイコンから起動する。ポータル画面の例を図11-1、11-2で示す。
Delphi/400の販売管理システムは、受注・出荷などの日々の業務を長年支え続けてきた。社内での追加開発に加えて、まとまった規模のシステム開発はミガロ.に委託するなどして、随時システムの機能改善を行っている。
IBM i のデータ活用については、取締役経理・総務部長の重責にありながら情報システムも担当する白井氏が、ユーザー要望にすべて応え続けることは非常に困難であった。ローコード開発ツールによる開発生産性向上とスキルトランスファーにより要望に応えるというValence導入の狙いは、ここまで順調に達成できている。
今後、取り組んでいきたいシステム改善ポイントとして、以下を考えている。
■ 出荷状況照会での地図連携による配車業務の効率化
■ IBM i をタブレット端末で利用(工場での棚卸業務、経営層向けの情報画面、など)
■ Web受発注システムの導入、など
Delphi/400、Valenceそれぞれの強みを活かした開発により、これからも少数精鋭でシステム改善を通した業務の効率化に貢献していく予定だ。
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