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ERP導入の前に! IBM i モダナイゼーションの勧め!

安定性・継承性にすぐれたIBM i(AS/400)は、多くの企業で高く評価され、基幹システムとして使用されています。ただ、長年利用されているお客様の間では、そろそろ新システムを検討したい、という声があることも事実です。IBM i 基幹システムの後継として、ERPや業務パッケージの導入を検討されるお客様が多いように感じられます。

一般的にERPシステムは、業界標準の業務の流れや各種法令・規制に準拠したシステムが利用できることが強みとなります。逆に、自社独自の業務のやり方を無理にERPで再現しようとすると、導入時のカスタマイズが膨大になったり、導入後のバージョンアップが難しくなったりといった問題が起こります。

本コラムでは、ERPシステムと自社業務の不適合が起こる理由をより詳しく分析し、ERP導入より前にIBM i のモダナイゼーション(GUI化)に取り組むメリットを提案いたします。

システム戦略のさまざまな選択肢

目次
1.ERPが自社業務に不適合となる理由
2.IBM i 再構築手法と新旧システムギャップの関係
3.既存資産を活かしたモダナイゼーション(GUI化)の提案
4.さいごに

1. ERPが自社業務に不適合となる理由

一般的にERPシステムには、以下のような様々なメリットがあります。

・業界標準の業務仕様が組み込まれている
・最新の法令・規制に準拠している
・入力画面、帳票、メールなどの必要な要素が統合されている
・業務効率向上のための工夫が盛り込まれている
ERPの導入に成功された企業も多数あり、本稿はERP導入の良し悪しを述べるものではないことを最初におことわりしておきます。

ERP導入が苦戦する原因は、何と言っても自社独自の業務のやり方とERPシステムの仕様との不適合です。軽微な相違であればカスタマイズで対応したり、相違点には目をつぶって他のメリットを享受することも可能ですが、競争力の元となる業務ノウハウや強みがERPにより失われることは何としても避けなくてはなりません。

本コラムでは、このようなシステムの不適合を (1) データベース構造 (2) 業務ロジック の2つの要素に分けて考えてみます。尚、ERPシステムと自社システムに相違点があっても、自社の業務運用に拘らずERPを正として利用するのであれば、問題はありません。以下は、自社独自の業務運用を継続したい場合の問題点とお考えください。

(1)  データベース構造
あるシステムのデータベース構造を特徴づける要素をさらに分解します。

a)データベースの種類
例えば、販売管理・生産管理等の自社開発システムとERPを比較した場合、保有するデータベースの種類は概ね一致しているはずですが、まったく同じということもあり得ません。もしERPのデータベースが不足していれば、カスタマイズで追加することは可能かもしれません。通常、DBの種類だけが異なることは無く、業務ロジックの追加もセットで必要になるでしょう。

b) レコードのレイアウト(フィールド)
あるDBのレコードに自社独自のフィールドを追加することは、カスタマイズで対応可能な場合が多いと思われます。 

c) DB同士のリレーション 
DBのリレーションは、ERPでカスタマイズしにくい要素かもしれません。一例をあげると、自社システムでは、ある得意先の担当営業所を商材カテゴリー毎に決定していると仮定し、ERPシステムでは得意先に対して商材は関係なく担当営業所が一意に決まる、とします。この場合、ERPを自社仕様に適合させるのは困難になるかもしれません。また、DBのリレーション(何と何が一意に決まるか)には、各社の業務ノウハウが詰めこまれていることが多いと考えられます。

データベース構造のギャップ発生ポイント

(2) 業務ロジック
情報システムは現実の業務を反映したものなので、システム間の業務ロジックの相違点とは、言い換えれば業務の運用方法の相違点ということになります。
あるシステムに特徴的な業務ロジックはあまりにも多岐にわたるため、網羅的にまとめることは困難ですが、一般的にシステム毎に差異が生じやすい要素をいくつかピックアップします。

a) ワークフロー
製造、物流など、特に作業工程が重要となる業務システムの場合、作業の手順や順番(=ワークフロー)に業務効率化のノウハウが詰まっていることがあります。

b) 権限設定
どの操作が、どの部門の誰の権限で行えるか、という権限設定は、システムの重要な要素です。各企業の組織は異なるため、権限設定は独自のものなりやすい傾向があります。

c) 入力チェック
たとえば「受注登録」を例にすると、必要な情報を画面に入力して必要なファイルを更新する、という処理自体はどんなシステムでも似ているかもしれません。しかし、受注入力の可否を決定する「与信チェック」には、得意先企業の規模や最近の取引実績などを複雑に判定するような独自の工夫が入っている可能性があります。このように、裏で動いている入力チェック機能も重要なシステムの差別化要因になります。

d) 取り消し
一度実行したトランザクションの取り消し処理は、地味ですが、システム構築の上で重要、かつ面倒なことがらになります。取り消し処理でシステムをどこまで戻せるか、という問題は、割り切りが必要だったり、多く戻れるほど良いわけでもなかったりするため、各社の考え方の差が出やすい事項です。

業務ロジックでギャップの発生しやすいポイント

ERP導入を検討する際は、自社の現状の業務やシステムとのフィットアンドギャップ分析が不可欠ですが、ギャップを発見するための手がかりになりそうな観点をいくつかご紹介しました。

2. IBM i 再構築手法と新旧システムギャップの関係

IBM i 基幹システムを再構築する方法として、ERPシステムの導入ではなく、IBM i の使用を継続しながらモダナイゼーションを行う方法もあります。

IBM i のモダナイゼーション手法に応じて、発生するギャップにも違いがあります。次の表では、システム再構築の手法に応じた新旧ギャップ発生の有無を示しています。

新旧システムのギャップは、克服すべき課題であるとともに、システム革新の原動力でもあるため、ギャップの有無が各戦略の良し悪しを直ちに決定するわけではありません。

IBM i のモダナイゼーション(GUI化)は、開発手法の違いより、いくつかのタイプに分類できます。本コラムでは(3)の手法をお勧めしますが、その前にIBM i モダナイゼーション手法の3つの分類についてご説明します。

(1) 既存5250プログラムをGUIアプリにコンバージョン
(2) 新規GUI システムをIBM i 上に構築
(3) IBM i の既存資産をベースとしたGUIシステムを追加

(1)のコンバージョンの場合、5250画面プログラムを元にしてWebベースのアプリケーションを自動的に生成します。この方法の場合、UIがWeb化されただけのアプリが基本となるため、既存システムのDBも業務プログラムもそのまま利用できます。

(2)の新規GUIシステムの構築は、IBM i 上で稼働する業務パッケージ(例:会計パッケージ等)をそのまま導入するようなケースが典型的です。データベースも業務ロジックもオールインワンで導入するので、ERP導入と同様のギャップが発生します。

(3)は、IBM i 既存資産、特に既存DBをそのまま活用してGUIベースの入力アプリを構築する方法です。業務ロジックは新たに開発が必要となります。

上記の中で、本コラムでは、(3) IBM i の既存資産をベースとしたGUIシステムを追加 する方法をお勧めします。

3. 既存資産を活かしたモダナイゼーション(GUI化)の提案

「IBM i 既存資産をベースとしたGUIシステムを追加」の特徴とメリットをご紹介します。

(1) 業務ロジックの見直しができる

既存プログラムのコンバージョンではなく、GUIプログラムの新規開発を行う場合、各入力プログラムで使用する業務ロジックは新たに開発することになります。必然的に現行業務の仕様やロジックの確認・見直しが必要となるので、この過程で、企業競争力の元となる業務・システム仕様を洗い出すことが大切です。

新規GUIプログラムを実際に開発する方法であれば、エンドユーザーに入力テストしてもらうことにより、新旧システムの差異を正確に判断することができます。「神は細部に宿る」というように、システムの価値は地味な業務仕様の中に隠れていることもあります。これらの隠れた強みは業務部門・IT部門の上長だけでは把握しきれるものではなく、実務担当者レベルでないと確認が困難です。

一方で、現場が必要とする機能の中には、単に習慣だけで運用しているものもあるでしょう。そのような機能は思い切って廃止することにより、業務もシステムもスリム化するチャンスになります。

業務仕様を徹底的に見直してコアの強みを洗い出す

(2) 既存データベースがそのまま利用できる

IBM i を廃止しERPを導入する場合は、既存システムのデータを移行する必要があり、非常に大きな作業負荷が発生します。これに対し、IBM i 上でGUIシステムを構築する方法なら、既存データに手を入れずにそのまま利用できるため、非常に大きなメリットになります。

また、業務ロジックのギャップ分析と比べて、DB構成のギャップ分析の方が机上でもやりやすい、という特徴があります。上で述べたDBの種類、レイアウト、リレーションの相違点を洗い出すことは、資料さえそろっていれば、業務ロジックの膨大な相違点を見極めるほどは難しくはないでしょう。

新旧システムのデータ構造を資料で分析

4. さいごに

IBM i 基幹システムからERPシステムへの変更を検討されていることをお客様との会話の中でお伺いすることも多く、IBM i ご利用者様にとって、ERP導入が重要な選択肢となっていることが推察されます。ERPの成否は各企業の状況により異なるので、一概に良い、悪いを決めることはできません。

ただし、IBM i 基幹システムを廃止してERPに移行するプロジェクトは、一般的に多額の費用と長い期間を要することを考えれば、その道筋の中でIBM i のモダナイゼーション(GUI化)を試す価値は充分にあると考えます。

改めてこの方法のメリットを記載します。

実態に即した業務仕様の見直しができる

実際にシステムを構築することで、企業競争力の元となっている業務仕様やプログラムがどの部分なのか再確認できる。

導入の敷居が低い

現行システムのデータ構造には手をつける必要がなく、そのまま利用できる。また、重要な部分のみ、1画面からでも速やかに導入でき、従来の5250アプリとの並行利用も可能。

ERP導入が不要となる可能性

業務仕様の見直しに役立つだけでなく、稼働したGUIシステムは実際の業務改善に寄与する。GUI化により業務課題が解決できれば、当面はERPを導入せず「IBM i を使い続ける」という方針に変わる可能性もある。

弊社ミガロ.では、既存のIBM i データを活用して入力画面を再構築できるIBM i のGUI化/Web化開発ツールを取り揃えております。ご興味がありましたら以下の関連情報をぜひご参照ください。将来のERP導入などシステム戦略を立案中のIBM i ユーザー様にとって、本コラムが ご参考になれば幸いです。

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